COVID-19:オミクロン株流行の間のSARS-CoV-2へのブレークスルー感染と再感染の感染力
Nature Medicine 29, 2 doi: 10.1038/s41591-022-02138-x
ワクチン既接種者での重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)ブレークスルー感染と既感染者での再感染は、次第に増えてきている。このような感染によって、SARS-CoV-2感染者の感染力に対するブースター投与を含めたワクチン接種や自然感染による免疫の影響を理解する必要性が、特に刑務所などの強力な伝播を伴うハイリスク集団で拡大していることがはっきりしてきた。本論文では、刑務所内という環境ではワクチン接種に由来する免疫と自然免疫の両方が、互いに無関係にSARS-CoV-2オミクロン変異株感染者の感染力を低下させることを示す。男性集団が多数を占める35のカリフォルニア州刑務所の2021年12月から2022年5月までのSARS-CoV-2サーベイランスデータを解析することにより、ワクチン未接種者のオミクロン症例は濃厚接触者へ感染を伝播するリスクが36%(95%信頼区間〔CI〕:31–42%)であったのに対し、ワクチン既接種者ではリスクが28%(25〜31%)と推定された。調整解析では、いずれかのワクチン接種、以前の感染のみ、ワクチン接種と以前の感染の両方という状態はそれぞれ、伝播性感染のインデックス・ケースのリスクを22%(6〜36%)、23%(3〜39%)、40%(20〜55%)減少させると推定された。ブースター投与や、より最近にワクチン接種を受けた場合は、ワクチン接種者の感染力がさらに低下した。これらの知見は、この刑務所の環境内では、ワクチン既接種者や既感染者、または、それら両方の場合はSARS-CoV-2感染時の高い感染力が維持されるが、このような感染力はワクチン接種歴や感染歴のない場合に比べると低下していることを示唆している。本研究によって、ワクチンの有益性は伝播の低下であり、排除ではないことが明らかにされた。