遺伝的関連解析:7万7539人のゲノムの遺伝的関連解析により希少疾患の病因が明らかになった
Nature Medicine 29, 3 doi: 10.1038/s41591-023-02211-z
希少疾患の半数以上の遺伝的な病因は、まだ明らかにされていない。大規模な患者コホートの標準化された全ゲノム配列解析や表現型解析は、未知の病因の発見機会を提供するが、これは効率的で強力な解析手法次第である。そこで我々は、10万ゲノムプロジェクトで全ゲノム配列決定された7万7539人の患者参加者について、まれなバリアントの遺伝子型と表現型を含んだ、コンパクトなデータベース「Rareservoir」を構築した。次に、遺伝的関連のベイズ推定法であるBeviMedを用いて、医師が患者参加者を割り付けた269の希少疾患分類と遺伝子との関連を推定した。その結果、既知の241の関連と、これまで知られていなかった19の関連を見いだした。さらに、他のコホートで家系探索を行い、バイオインフォマティクス的手法と実験的手法を用いて、疾患とERG、PMEPA1、GPR156との関連を検証し、以下の3つについて疾患原因としての根拠が得られた:(1)ETS(Erythroblast Transformation Specific)ファミリー転写因子をコードするERG遺伝子の機能喪失型バリアントは原発性リンパ浮腫を引き起こす、(2)トランスフォーミング増殖因子(TGF)β調節因子をコードするPMEPA1遺伝子の最終エキソン内の欠失型バリアントはロイス・ディーツ症候群の原因となる、(3)GPR156遺伝子の機能喪失型バリアントは劣性(潜性)の先天性聴覚障害を生じる。Rareservoirは、数万人の参加者で構成された、まれな疾患コホートの研究に必要な遺伝的データと表現型データの総合のための、軽量で柔軟なポータブルシステムとなる。