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マイクロバイオーム:炎症性腸疾患での5-ASAの臨床的有効性は腸内微生物による代謝で低下する

Nature Medicine 29, 3 doi: 10.1038/s41591-023-02217-7

炎症性腸疾患(IBD)に対して広く使われている治療薬である5-アミノサリチル酸(5-ASA)の有効性のばらつきの原因の1つは腸内微生物によるアセチル化と不活性化であると、数十年にわたって考えられてきた。しかし、これに関係する微生物や酵素は見つかりにくいことが示されている。この代謝反応の起点を明らかにするため、我々は対照者とIBD患者、合わせて132人からなる長期的IBDMDBコホートから得た腸内マイクロバイオームメタゲノミクス、メタトランスクリプトミクスおよびメタボロミクスを統合したマルチオミクスワークフローを開発した。これによって、これまで性質が分かっていなかった12の微生物由来アセチルトランスフェラーゼが5-ASAの不活化と関連付けられた。これらのアセチルトランスフェラーゼは、チオラーゼとアシル-CoA N-アシルトランスフェラーゼという2つのタンパク質スーパーファミリーに属している。両方のタンパク質ファミリーの代表的な酵素のin vitroでの特性が調べられ、これらの酵素が5-ASAをアセチル化するできることが確認された。発見コホートでの横断研究に続けて、無関係なSPARC IBDコホート(n = 208)で行われた予測的バリデーションで、これらの微生物チオラーゼのうちの3つとアシル-CoA N-アシルトランスフェラーゼの1つが、5-ASA使用者での治療失敗のリスク増大と、疫学的に見て関連していることが分かった。まとめるとこれらのデータは、IBDの治療管理におけるずっと以前からの難問に対処したもので、性質が未知だった腸内微生物活性を明らかにする方法を概説し、マイクロバイオームをベースとする個別化医療の可能性を高めるものである。

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