心血管疾患:人工甘味料エリスリトールと心血管事象のリスク
Nature Medicine 29, 3 doi: 10.1038/s41591-023-02223-9
人工甘味料は砂糖の代用品として広く使われているが、心血管代謝疾患のリスクに及ぼす長期的な影響についてはほとんど分かっていない。今回我々は、砂糖の代用として広く使用されているエリスリトールとアテローム血栓性疾患のリスクについて調べた。心血管疾患のリスク評価を受けている患者を対象とした最初のノンターゲットメタボロミクス研究(n = 1157、発見コホート、NCT00590200)では、複数のポリオール類甘味料、特にエリスリトールの循環血中レベルは、主要有害心血管事象(MACE、死亡あるいは致命的でない心筋梗塞もしくは脳卒中を含む)の新規発生(3年間)リスクと関連していた。次に、心血管疾患の選択的なリスク評価を受けている安定状態の患者からなる、互いに無関係の米国検証コホート(n = 2149、NCT00590200)とヨーロッパ検証コホート(n = 833、DRKS00020915)でのターゲットメタボロミクス解析で、この関連が確認された〔第1四分位数と比較した第4四分位数の補正ハザード比(95%信頼区間)は、米国検証コホートでは1.80(1.18~2.77)、ヨーロッパ検証コホートでは2.21(1.20~4.07)であった〕。生理学的レベルでは、エリスリトールはin vitroで血小板の反応性を高め、in vivoで血栓形成を増強した。前向きパイロット介入研究(NCT04731363)では、健康なボランティア(n = 8)でのエリスリトール摂取は血漿エリスリトールレベルの顕著で持続的(> 2 d)な上昇を誘導し、これはin vitroおよびin vivo研究では血小板の反応性上昇と血栓形成能の増強に関連する閾値を大幅に超えていた。我々の知見は、エリスリトールがMACEの新規発生リスクと血栓形成増加促進の両方に関連付けられることを明らかにしており、エリスリトールの長期的な安全性を評価する研究を行うことの根拠となる。