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脳疾患:血管周囲腔拡大の程度のゲノミクスから明らかになった脳小血管病の初期機構

Nature Medicine 29, 4 doi: 10.1038/s41591-023-02268-w

脳MRI画像に基づいた血管周囲腔(PVS)拡大の程度は、脳卒中や認知症の主な原因である脳小血管病の新たなバイオマーカーとして近年注目されているが、その原因や生理的発生機構などはほとんど解明されていない。本論文では、最大4万95人の参加者(住民を対象とした18コホート、66.3 ± 8.6歳、96.9%がヨーロッパ系)におけるゲノムワイド関連解析から、ゲノムワイドの有意水準を満たす24のPVSリスク座位(主に白質PVSのリスク座位)を特定した。これらは、若年成人(N = 1748、22.1 ± 2.3歳)で既に白質PVSとの関連を示し、また、早発性白質ジストロフィー遺伝子群および、胎児脳の内皮細胞に発現する遺伝子群に多く存在することから、若年から進行する機構であることが示唆される。ゲノム全体で白質PVSのリスク座位の53%が、日本人集団ベースのコホート(N = 2862、68.3 ± 5.3歳)でも名目上有意な関連を示した(多重検定補正後は27%)。メンデル無作為化から、高血圧が大脳基底核PVSおよび海馬PVS量増加の原因として、そして血圧を考慮した上での大脳基底核PVSおよび海馬PVS量が、脳卒中リスク増加の原因として関連していることが裏付けられた。我々の知見は、PVSと脳小血管病の生物学的基盤解明の手掛かりとなるもので、細胞外マトリックス、膜輸送、発生過程に関わる経路の関与を明らかにするとともに、遺伝的情報に基づいた薬剤標的の優先順位付けの可能性を示している。

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