代替塩/血圧:高齢者養護施設における血圧降下のための代替塩と塩分補給制限 ― クラスター無作為化試験
Nature Medicine 29, 4 doi: 10.1038/s41591-023-02286-8
減塩戦略の有効性や安全性に関する質の高いエビデンスは、特に、最もメリットはあるが有害な影響を受けるリスクも高い高齢者についてはわずかしかない。今回我々は、中国の48の居住型高齢者養護施設(55歳以上の、男性1230名と女性382名からなる1612名の参加者)をクラスター無作為化により2 × 2の要因試験デザインに割り付け、2年間の臨床試験を行った。要因デザインは、代替塩(62.5%塩化ナトリウムと25%塩化カリウム)の補給と通常塩の補給の比較と、通常塩/代替塩の漸減補給と通常補給の比較とした。代替塩は、通常塩と比べて、収縮期血圧を低下させ〔−7.1 mmHg、95%信頼区間(CI)−10.5から−3.8〕、本試験の主要評価項目を達成したが、一方で、制限補給は、通常塩あるいは代替塩の通常補給と比べても、収縮期血圧に影響を及ぼさなかった。また代替塩は、拡張期血圧の低下ももたらし(−1.9 mmHg、95%CI −3.6から−0.2)、心血管イベントもより少なかったが〔ハザード比(HR)0.60、95%CI 0.38–0.96〕、全死亡率には影響がなかった(HR 0.84、95%CI 0.63–1.13)。安全性の点からは、代替塩は平均の血清カリウム値を上昇させ、生化学的な高カリウム血症を引き起こす頻度は高まったが、有害な臨床転帰は伴わなかった。これに対し、塩分制限は、いずれの研究結果にも影響を及ぼさなかった。本試験の結果は、塩分補給制限の取り組みではなく、代替塩の使用によって、中国の高齢者養護施設の居住者に、血圧降下が実現され、健康上の恩恵がもたらされる可能性を示している。Clinicaltrials.gov登録:NCT03290716