妊産婦の健康:1990~2050年の世界、地域、国のレベルでの原因別妊産婦死亡のシミュレーションに基づく推定と予測
Nature Medicine 29, 5 doi: 10.1038/s41591-023-02310-x
妊産婦死亡は、世界的に重要な保健上の課題の1つである。妊産婦死亡数には世界的に減少が見られるものの、妊産婦の死亡原因の多様さと過少報告の多さから、正確な数の把握は依然として困難である。我々は、200の国と地域の女性を対象に、個人の出産に対する考え方や病歴を考慮したGlobal Maternal Healthマイクロシミュレーションモデルを開発した。人口動態、疫学、臨床、医療システムの各データを、医学文献、住民登録・人口動態統計システム(CRVS)、人口保健調査(DHS)データといった複数のデータソースから生成した。1990~2015年の実地データに合わせてシミュレーションモデルを調整し、2016~2020年の指標を用いて、モデルの予測精度を評価した。1990~2050年の各国の妊産婦健康指標を予測したところ、1990~2020年に世界の年間妊産婦死亡は、58万7500人(95%不確実性区間〔UI〕52万600~71万4000)から33万7600人(95% UI 30万7900~36万4100)へと40%以上減少し、さらに、2030年には32万7400人(95% UI 28万7800~36万700)へ、2050年には32万200人(95% UI 26万7100~37万4600)へと減少すると見積もられた。世界の妊産婦死亡率は、2030年には167(95% UI 142~188)に低下すると見積もられ、140を超えるのは58カ国である。この予測は、現在の傾向のままであれば、妊産婦死亡率の持続可能な開発目標(SDGs)の達成が困難であることを示唆している。今後の研究において、今回開発された我々の構造モデルを利用すれば、各国で妊産婦死亡の減少の加速を可能にするような、状況に応じた政策介入を明らかにしていけるだろう。