精神疾患:都市生活環境が成人のメンタルヘルスに及ぼす影響
Nature Medicine 29, 6 doi: 10.1038/s41591-023-02365-w
都市生活者は、多くの環境要因に曝露されており、それらが組み合わさったり、相互作用したりすることでメンタルヘルスに影響する可能性がある。都市環境の個々の要因は個別に調査されてきたが、複雑な都市生活への曝露が脳とメンタルヘルスにどの程度関連するか、そしてこの関連が遺伝的要因によってどのように調節されるかをモデル化する試みは全く行われてこなかった。今回我々は、英国バイオバンクの参加者15万6075人のデータを使用して、都市環境と精神症状の関係を調査するためにスパース正準相関分析を実行した。我々は、社会的剥奪、大気汚染、街路網、都市の土地利用密度に関連する環境プロファイルが、情動性症状グループと正の相関関係にあることを見いだした(r = 0.22、Pperm < 0.001)。このプロファイルは、報酬処理と一致する脳容積差が介在し、CRHR1などの数多くのストレス応答遺伝子によって調節される。例えば、CRHR1は脳容積差の分散の2.01%を説明する。植物(植生)の豊富さや目的地へのアクセスの良さなどの防御要因は、不安症状グループと負の相関があり(r = 0.10、Pperm < 0.001)、情動調節に必要な脳領域によって仲介され、また、EXD3によって調整される。EXD3は分散の1.65%を説明していた。3番目の都市環境プロファイルは、情緒不安定症候群グループと相関していた(r = 0.03、Pperm < 0.001)。我々の知見は、都市生活の異なる環境プロファイルが、それぞれ異なる神経生物学的経路を通じて特定の精神症状グループに影響を与える可能性があることを示唆している。