Resources
がん免疫療法:がん種横断的T細胞アトラスは細胞ストレス応答状態を免疫療法抵抗性と結び付ける
Nature Medicine 29, 6 doi: 10.1038/s41591-023-02371-y
腫瘍浸潤性T細胞はがんの有望な治療手段を提供するが、その状態についてはまだ十分に特性解析がなされていない。本論文では、16のがんタイプから得た30万8048のトランスクリプトームに基づいてT細胞の一細胞アトラスを作製した。それによって、これまでに報告されていないT細胞状態や、濾胞ヘルパーT細胞、制御性T細胞、増殖性T細胞の不均一な亜集団を明らかにする。今回我々は、ヒートショック遺伝子発現を特徴とする、ユニークなストレス応答状態であるTSTRを明らかにした。TSTR細胞は、さまざまながんタイプの腫瘍微小環境内にin situで検出され、大部分は腫瘍床や腫瘍縁周辺のリンパ球凝集体や三次リンパ様構造と考えられる部位の中に存在した。T細胞状態や構成は、23のコホート由来の患者375人(免疫チェックポイント阻害剤の治療を受けた患者171人を含む)のゲノムや、病理学的、臨床的な特徴と相関した。また、特に非応答性腫瘍では、免疫チェックポイント阻害療法後の腫瘍内のCD4/CD8+細胞でヒートショック遺伝子発現の有意な上昇が見つかり、このことは、免疫療法の抵抗性に対してTSTRが役割を果たしている可能性を示唆している。適切にアノテーションされた我々のT細胞参照マップや、ウェブポータル、自動アラインメント/アノテーションツールは、T細胞療法の最適化やバイオマーカー発見のための貴重な研究資源となるだろう。