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原発性硬化性胆管炎:原発性硬化性胆管炎において抗原によって引き起こされる大腸炎症は異形成の発生と関連している
Nature Medicine 29, 6 doi: 10.1038/s41591-023-02372-x
原発性硬化性胆管炎(PSC)は胆管の免疫介在性疾患で、症例の約90%で炎症性腸疾患(IBD)が併存する。大腸がんは、PSCとIBDを併存する患者の主要な合併症であり、これらの患者は、PSCを併存しないIBD患者と比べて、大腸がんのリスクがはるかに高い。本論文では、PSC患者65人、IBD患者108人、健康な人48人から採取した右側結腸組織のフローサイトメトリー、バルクおよび一細胞でのトランスクリプトミクス、T細胞受容体およびB細胞受容体のレパートリー解析を組み合わせて、PSC患者に見られる独特な炎症性の適応免疫転写シグネチャーを特定した。この炎症性シグネチャーは、PSC患者で異形成のリスクが大きく、異形成が生じるまでの時間が短いことと関連があり、また、抗原によって誘導されるインターロイキン-17A(IL-17A)+ FOXP3(forkhead box P3)+ CD4 T細胞(病因性IL-17シグネチャーを発現する)に加え、IgGを分泌する形質細胞の増殖を特徴とする。これらの結果は、PSCとIBDでは異形成の出現を促進する機構が異なることを示唆しており、また、PSC患者における大腸がんの予防につながる可能性のある分子的知見を示している。