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妊娠合併症:妊娠高血圧腎症と妊娠高血圧の多遺伝子予測
Nature Medicine 29, 6 doi: 10.1038/s41591-023-02374-9
妊娠高血圧腎症(子癇前症)と妊娠高血圧は、一般的な妊娠合併症であり、母子の有害転帰に関連する。現在のところ、予測や予防、治療のためのツールは限られている。本研究では、母体DNA上の遺伝子変異と、妊娠高血圧腎症2万64例と対照群70万3117例の関連、および妊娠高血圧症候群1万1027例と対照群41万2788例の関連を多民族メタ解析により調査した。全体で、妊娠高血圧腎症や妊娠高血圧、あるいはその両方に関連する18の独立した座位が特定された。そのうち12座位は本研究において新規に特定された(例えばMTHFR–CLCN6、WNT3A、NPR3、PGR、RGL3)。多形質解析で見つかった2座位も含まれていた(PLCE1およびFURIN)。見つかった座位からは、ナトリウム利尿ペプチドシグナル伝達、血管新生、腎糸球体機能、栄養膜発生、免疫調節不全の役割が明らかになった。さらに我々は、妊娠高血圧腎症や妊娠高血圧を予測するゲノムワイドポリジェニックリスクスコア(PRS)を導出した。PRSは外部コホートにおいて臨床リスク因子とは独立に発症を予測し、妊娠高血圧腎症の予防のための低用量アスピリンに対する適応性の再分類に寄与した。まとめると、これらの結果は、妊娠中の高血圧障害の機序に関する手掛かりを示しており、妊娠リスク層別化を向上させる可能性がある。