Brief Communication
先天性代謝疾患:生殖細胞系列IDH2変異を有するD-2-ヒドロキシグルタル酸尿症の患者2人におけるエナシデニブ治療
Nature Medicine 29, 6 doi: 10.1038/s41591-023-02382-9
D-2-ヒドロキシグルタル酸尿症2型(D2HGA2)は、IDH2(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2)遺伝子のR140のヘテロ接合性変異が原因で起こる重症な先天性代謝疾患である。今回我々は、変異型IDH2酵素の選択的阻害剤であるエナシデニブを用いたD2HGA2の小児患者2人(そのうち1人は重症拡張型心筋症を示す)の治療結果について報告する。エナシデニブ治療は、両患者で体液中のD-2-ヒドロキシグルタル酸(D-2-HG)濃度の正常化をもたらした。1日当たり50 mgおよび60 mgの用量では、無症候性高ビリルビン血症以外に副作用は観察されなかった。心筋症の患者では、D-2-HGの長期的な抑制に伴って心機能が改善され、また両患者とも治療によって日常生活機能、全身の運動性、社会的相互作用が改善された。心筋症の患者では治療に連動した血清リン脂質レベルの変化が誘導され、これは培養した線維芽細胞で部分的に再現され、脂質や酸化還元関連遺伝子経路に対する複雑な作用と関連していた。これらの知見は、変異酵素を標的とした阻害によって、遺伝性の慢性神経代謝疾患の病態を部分的に戻せることを示している。