レット症候群:レット症候群の治療のためのトロフィネチド ─ 無作為化第3相試験
Nature Medicine 29, 6 doi: 10.1038/s41591-023-02398-1
レット症候群は、まれな遺伝性の神経発達障害である。トロフィネチドは、インスリン様増殖因子1タンパク質のN末端トリペプチドであるグリシン–プロリン–グルタミン酸の合成類似体であり、レット症候群の第2相研究において臨床効果が実証されている。今回の第3相試験(https://clinicaltrials.gov登録番号:NCT04181723)では、レット症候群の女性でトロフィネチド(n = 93)あるいはプラセボ(n = 94)の1日2回の経口投与を12週間にわたって行った。有効性の共主要評価項目(coprimary endpoints)に関して、ベースラインから12週目までのレット症候群行動質問票(RSBQ:Rett Syndrome Behaviour Questionnaire)の最小二乗平均値(LSM)の変化は、トロフィネチド対プラセボで−4.9対−1.7(P = 0.0175、コーエンのd効果量 0.37)であり、また、12週目の時点で臨床全般印象度-改善度(CGI-I)のLSMは、3.5対3.8であった(P = 0.0030、効果量 0.47)。有効性の主な副次評価項目に関しては、CSBS-DP-IT–Social(Communication and Symbolic Behavior Scales Developmental Profile Infant–Toddler Checklist Social)複合スコアにおけるベースラインから12週までのLSMの変化は、−0.1対−1.1(P = 0.0064、効果量 0.43)であった。治療により発現した有害事象の多くは下痢であり(トロフィネチドで80.6%に対し、プラセボで19.1%)、大部分は軽度から中等度であった。プラセボと比較してトロフィネチドでは、有効性の共主要評価項目に関して有意な改善が観察され、このことは、トロフィネチドがレット症候群の中核症状の治療に効果があることを示唆している。