慢性疼痛:慢性疼痛の発症と広がりに関する予後リスクスコア
Nature Medicine 29, 7 doi: 10.1038/s41591-023-02430-4
慢性疼痛は複雑な病態であり、生物学的、心理学的、社会学的なさまざまな要因が組み合わさり、慢性疼痛へ影響を及ぼしている。今回、英国バイオバンク(n = 49万3211)のデータを用いて、痛みが近位部位から遠位部位へと広がっていることを示し、また、同時に存在している痛み部位の数を予測する、慢性疼痛の生物心理社会的モデルを開発した。このデータ駆動型モデルに基づいて、多彩な慢性疼痛病態(曲線下面積〔AUC〕は0.70〜0.88)および疼痛関連の病状(AUCは0.67〜0.86)を分類するリスクスコアを明らかにした。縦断的データ分析において、このリスクスコアは、およそ9年後の、広範性慢性疼痛(chronic widespread pain:CWP)の発症、あらゆる身体部位への慢性疼痛の広がり、そして慢性疼痛よりも強い痛み(高インパクト慢性疼痛)を予測した(AUCは0.68〜0.78)。カギとなるリスク因子には、不眠、「うんざり」感、疲労、ストレスが多い人生上の出来事、30を超えるボディーマス指数(BMI)などが挙げられる。このリスクスコアを簡略化したROPS(risk of pain spreading、痛み広がりリスク)というスコアを用いて、6個の簡単な質問(二者択一式回答型)を実施したところ、同様な予測能を示した。続いて、ROPSを北フィンランド出生コホート(n = 5525)やPREVENT-ADコホート(n = 178)で検証すると、同等の予測性能が得られた。今回得られた知見は、慢性疼痛の病態が、共通する一連の生物心理社会的因子から予測可能であることを示しており、これは研究プロトコルを目的に合わせて変更したり、臨床試験における患者の無作為化を最適化したり、疼痛コントロールを改善したりする際に役立つと期待される。