乳がん:さまざまなHER2発現の転移性乳がんにおけるトラスツズマブ デルクステカン ─ 第2相DAISY試験
Nature Medicine 29, 8 doi: 10.1038/s41591-023-02478-2
乳がん治療に用いられる抗HER2抗体–薬物複合体であるトラスツズマブデルクステカン(T-DXd)の作用メカニズムおよび耐性メカニズムは、まだ明らかにされていない。今回の第2相DAISY試験では、転移性乳がんのHER2過剰発現患者(n = 72、コホート1)、HER2低発現患者(n = 74、コホート2)、およびHER2非発現患者(n = 40、コホート3)で、T-DXdの有効性評価を行った。解析対象集団(n = 177)において、確定客観的奏効率(主要評価項目)は、コホート1では70.6%(95%信頼区間〔CI〕58.3~81)、コホート2では37.5%(95%CI 26.4~49.7)、コホート3では29.7%(95%CI 15.9~47)だった。主要評価項目はコホート1とコホート2で達成された。副次評価項目には安全性を含めた。新たな安全性シグナルは観察されなかった。投薬下で、HER2を発現する腫瘍(n = 4)では、T-DXdが強く染色された。逆に、HER2免疫組織化学検査のスコア0の検体(n = 3)では、T-DXdは全く、あるいはほとんど染色されなかった(ピアソン相関係数r = 0.75、P = 0.053)。HER2免疫組織化学検査のスコア0の転移性乳がん患者で確定客観的奏効が見られたのは、ERBB2の発現が中央値より低かった患者では14人中5人(35.7%、95%CI 12.8~64.9)だったのに対して、ERBB2発現が中央値より高かった患者では10人中3人(30%、95%CI 6.7~65.2)だった。HER2の発現はT-DXd有効性の決定要因だが、今回の結果は、別のメカニズムも関与している可能性を示唆している。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT04132960。