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性差:脳タンパク質の発現と疾患における性差

Nature Medicine 29, 9 doi: 10.1038/s41591-023-02509-y

ヒトの複雑形質の多くは性別による違いがあるが、その基盤となる機序についての知見は限られている。本論文では、1277人のヒト脳プロテオームを対象に、生物学上の性別がタンパク質発現とその遺伝的調節に及ぼす影響について調べた。その結果、脳タンパク質の13.2%(1354)は存在量に性差があり、1.5%(150)は性差のあるタンパク質量的形質座位(sb-pQTL)を有することを見つけた。発現に性差がある遺伝子では、タンパク質レベルと転写産物レベルの性差は67%で一致していることを見いだした。しかし、性別が発現の遺伝的調節に及ぼす影響は、タンパク質レベルでより顕著であった。24の精神医学的形質、神経学的形質、脳形態学的形質について検討したところ、これらの形質の推定原因遺伝子のうち平均25%が性別によってタンパク質の存在量が異なり、12の推定原因タンパク質がsb-pQTLを有していた。また、性特異的pQTLと6つの精神・神経疾患に関する性別で層別化されたゲノムワイド関連解析を統合することで、片方の性ではこれらの形質に寄与するが、もう片方の性では寄与しない新たな23のタンパク質を発見した。まとめると、これらの知見は、脳タンパク質の発現と疾患における性差の根底にある機序についての洞察の端緒となるといえよう。

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