肥満:HFpEFを対象としたセマグルチドの効果を肥満クラスと体重減少から解析 ― STEP-HFpEF試験の事前指定分析
Nature Medicine 29, 9 doi: 10.1038/s41591-023-02526-x
STEP-HFpEF試験において、セマグルチドは、肥満表現型を有する駆出率の保たれた心不全(HFpEF)患者の症状、身体的制約、および運動機能を改善し、体重を減少させた。本試験では事前指定された解析によって、セマグルチドの効果を2つの主要評価項目(カンザスシティー心筋症質問票-臨床サマリースコア〔KCCQ-CSS〕および体重の変化)、および検証的副次評価項目(6分間歩行距離〔6MWD〕の変化、階層的な複合評価項目〔死亡、HFイベント、KCCQ-CSSおよび6MWDの変化〕、C反応性タンパク質〔CRP〕の変化)に関して、肥満クラスI~III(クラスIはボディマス指数〔BMI〕30.0~34.9 kg m−2、クラスIIはBMI 35.0~39.9 kg m−2、クラスIIIはBMI ≥ 40 kg m−2)を対象に、52週後のセマグルチドによる体重減少に基づき調べた。セマグルチドは、全ての肥満カテゴリーで全ての結果を一貫して改善した(治療効果×BMIの相互作用のP値は、全てにおいて有意というわけではない)。セマグルチド投与患者では、KCCQ-CSS、6MWD、CRPの改善は、体重減少が大きいほど大きかった(例えば、体重が10%減少するごとに、KCCQ-CSSが6.4ポイント〔95%信頼区間[CI]:4.1、8.8〕改善し、6MWDが14.4 m〔95%CI:5.5、23.3〕改善した)。肥満表現型HFpEF患者では、セマグルチドは、全ての肥満カテゴリーで、症状、身体的制限、運動機能を改善し、炎症および体重を減少させた。セマグルチド投与患者では、便益の大きさは体重減少の程度に直接関連していた。以上まとめると、これらのデータは、肥満表現型HFpEF患者において、セマグルチドによる体重減少が重要な治療戦略であることを裏付けるものである。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT04788511。