栄養免疫学:完全菜食とケトン食ではヒトで誘発される末梢免疫シグネチャーが異なる
Nature Medicine 30, 2 doi: 10.1038/s41591-023-02761-2
栄養はあらゆる生理的過程に広く影響を及ぼす。しかし、栄養がヒトの免疫にどのような影響を及ぼすかは、まだほとんど分かっていない。本研究では、20人の被験者が完全菜食またはケトン食を順番に2週間ずつ摂取した臨床試験(NCT03878108)に対する事後解析によって、食餌介入が免疫と微生物相の両方に及ぼす影響について検討した。マルチオミクス解析(多次元フローサイトメトリー、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、およびメタゲノムのデータセットなど)を用いて、それぞれの食餌および食餌の切り替えが宿主の免疫や微生物相にどのような影響を与えるかを評価した。その結果、全体的にケトン食では、適応免疫系に関連する経路が有意に活性化され、適応免疫系の細胞が増加していることが明らかになった。対照的に、完全菜食では自然免疫系が大きな影響を受け、抗ウイルス免疫に関連する経路の活性化などが見られた。どちらの食餌も、微生物相と宿主のアミノ酸代謝に対して有意かつ異なる影響を及ぼしており、ケトン食後では食餌介入前や完全菜食と比べ、ほとんどの微生物代謝経路が大きく低下していた。さらに、多様な被験者がいるにもかかわらず、アミノ酸、脂質、免疫系に関連する化合物からなるデータセット間では、ネットワーク状の緊密なつながりが存在することが観察された。以上を総合すると、さまざまな被験者に対して管理された食餌介入プログラムを2週間にわたって実施するだけで、宿主免疫に有意かつ多様な影響を与えられることが実証された。このことは、精密な栄養介入に示唆を与える可能性がある。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT03878108。