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メンタルヘルス:個人向けの病院受診チャットボットを活用してメンタルヘルス治療へのアクセスしやすさの格差を埋める
Nature Medicine 30, 2 doi: 10.1038/s41591-023-02766-x
治療へのアクセスにおける不平等は、さまざまな医療分野のほとんどの医療システムに見られる差し迫った問題である。メンタルヘルスケアでは、マイノリティーの人々の治療へのアクセスの低下は至る所で見られるが、改善策はほとんどない。本研究では、デジタルツールを用いることでいくつかの主要な障壁に対処することができ、アクセスのしやすさの格差が縮小できることを実証した。我々は、イングランドの国民保健サービス(NHS)の患者12万9400人を対象に実施された多施設観察研究で、患者に合わせた病院受診に関する人工知能(AI)チャットボットが、患者の受診申込み数や、民族・性別・性的指向の多様性に与える影響を評価した。その結果、このデジタルソリューションを活用したサービスでは、受診申込み数が大幅に増加することが確認された(対照サービスでは6%増であったのに対し15%増)。この増加がノンバイナリー(179%増)や少数民族(29%増)といったマイノリティーの人々において特に顕著であったことは、非常に重要である。4万2332人からの定性的なフィードバックを自然言語処理で解析した結果、チャットボットの人間を介さない性質と、患者が治療の必要性を自己認識したことが、アクセスの多様性に改善が見られた潜在的な要因であることが分かった。これは、デジタルツールがメンタルヘルスケアに見られる不平等の克服に役立つ可能性を示す強力な根拠となる。