遺伝子治療:アデノシンデアミナーゼ欠損症に対するレトロウイルス遺伝子治療の長期的かつリアルワールドでの安全性と有効性
Nature Medicine 30, 2 doi: 10.1038/s41591-023-02789-4
アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症は重症複合免疫不全症(SCID)を引き起こす。これまでの臨床試験から、ブスルファンによる強度減弱前処置(RIC)後の自家CD34+細胞への遺伝子治療は、ADA-SCIDに対する有望な治療法であることが示されているが、長期的なデータは得られていない。本論文において我々は、レトロウイルスを用いた骨髄由来造血幹細胞のex vivo遺伝子治療を受けたADA-SCID患者43人の長期的な安全性および有効性のデータについての解析を報告する。22人の患者(追跡期間の中央値15.4年)は、臨床開発プログラムあるいは指定患者プログラムの下で治療を受けた。19人の患者は、市販承認後に治療を受け(追跡期間の中央値3.2年)、また2人の追加の患者は、動員末梢血CD34+細胞への遺伝子治療を受けた。データカットオフの時点において、43人の患者は全員生存しており、追跡期間の中央値は5.0年(四分位範囲2.4~15.4)で、2年の時点での無介入生存率(長期の酵素補充療法あるいは同種造血幹細胞移植の必要がない)は88%(95%信頼区間78.7~98.4%)であった。有害事象あるいは有害反応の大部分は、疾患背景やブスルファン前処置、あるいは免疫再構築に関連するものであり、リアルワールドでの経験による安全性プロファイルは市販前の段階のコホートのものと一致していた。指定患者プログラムの患者1人は、遺伝子治療後4.7年で治療に関連したT細胞白血病を発症したが、現在寛解している。遺伝子修正された多数の細胞系譜の細胞の長期持続、代謝による解毒、免疫再構築、感染率の低下が観察された。推定の混合効果モデルによって、注入されたCD34+細胞の用量が高いほど、また遺伝子治療時の年齢が若いほど、遺伝子導入されたCD3+細胞、リンパ球、CD4+ CD45RA+ナイーブT細胞のプラトーに正の影響を与えるが、一方で、遺伝子導入されたCD15+細胞の最終的なプラトーに対しては細胞の用量は正の影響を及ぼすことが示された。これらの長期的なデータは、ADAにおける遺伝子治療のリスク・便益は望ましいままであることを示唆しており、また長期の安全性モニタリングを続けることの必要性を示している。臨床試験登録番号:NCT00598481、NCT03478670。