心血管疾患:ナイアシンの最終代謝物は血管炎症を促進し、心血管疾患のリスクに寄与する
Nature Medicine 30, 2 doi: 10.1038/s41591-023-02793-8
心血管疾患(CVD)を防ぐための集中的な取り組みが行われているにもかかわらず、ガイドラインが推奨する介入を全て受けている人であっても、CVDの残余リスクはかなり存在する。ナイアシンは必須微量栄養素であり、主食となる食品に強化されているが、CVDにおける役割はよく分かっていない。今回、前向き発見コホート(合計n = 1162、女性n = 422)において、安定した心疾患の患者の空腹時血漿の非標的メタボロミクス解析を行うと、ナイアシン代謝が主要心血管イベント(MACE)の発生と関連していることが示唆された。ナイアシンが過剰になる場合の最終代謝物であるN1-メチル-2-ピリドン-5-カルボキサミド(2PY)およびN1-メチル-4-ピリドン-3-カルボキサミド(4PY)の血清レベルは、2つの検証コホートで3年間のMACEリスクの上昇と関連していた(米国:合計n = 2331、女性n = 774。ヨーロッパ:合計n 832、女性n = 249)(2PYに対する補正ハザード比〔HR〕〔95%信頼区間〕は、米国1.64〔1.10~2.42〕およびヨーロッパ2.02〔1.29~3.18〕。4PYに対しては、米国1.89〔1.26~2.84〕およびヨーロッパ1.99〔1.26~3.14〕)。2PYと4PYの両方のレベルと有意な関連を示す遺伝的バリアントrs10496731についてのフェノームワイド関連解析から、このバリアントと可溶性VCAM-1(soluble vascular adhesion molecule 1:sVCAM-1)のレベルとの関連が明らかになった。また、メタ解析によりrs10496731とsVCAM-1の関連が確認された(合計n=10万6000、女性n = 5万3075、P = 3.6 × 10−18)。その上sVCAM-1レベルは、検証コホートでも2PYと4PYの両方と有意に相関していた(合計n = 974、女性n = 333)(2PY:rho = 0.13、P = 7.7 × 10−5。4PY:rho = 0.18、P = 1.1 × 10−8)。さらに、マウスに生理的レベルの4PYを投与すると、VCAM-1の発現上昇と血管内皮への白血球の接着が誘導されたが、4PYの構造異性体である2PYでは誘導されなかった。これらの結果をまとめると、過剰なナイアシンの最終分解産物である2PYと4PYは、どちらもCVDの残余リスクと関連していることが分かった。また、4PYとMACEの間の臨床的関連の基礎には炎症依存的機構があることも示唆された。