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胎児オルガノイドモデル:ヒトの羊水および気管液の一細胞から誘導した出生前胎児の初代培養上皮オルガノイドの樹立

Nature Medicine 30, 3 doi: 10.1038/s41591-024-02807-z

胎児の組織特異的幹細胞の単離や初代培養オルガノイドの樹立は、妊娠中絶で得られる試料に限定されるため、胎児の発生や先天性疾患に対する出生前研究の妨げとなっている。従って、患者特異的な新しいin vitroモデルが必要とされる。この目的のためには、組織試料や再プログラム化を必要とすることなく、妊娠中に胎児の幹細胞の単離と増殖を行うことができれば有益である。羊水は、発生中の複数の器官に由来する細胞の供給源である。本論文では、一細胞解析を用いて、ヒト羊水に存在する細胞のアイデンティティーを解析した。これによって、胎児の消化管、腎臓、肺を起源とする生存可能な上皮幹/前駆細胞が特定および単離された。これらの細胞を培養すると、クローン性上皮オルガノイドが形成され、これらは小腸、尿細管、肺のアイデンティティーを示した。羊水オルガノイドは、トランスクリプトーム、タンパク質発現、機能について、それらの起源となる組織の特徴を示した。出生前の疾患モデル化に関連して、先天性横隔膜ヘルニアの胎児の羊水および気管液の細胞から肺オルガノイドを樹立したところ、この疾患のいくつかの特徴が再現された。羊水オルガノイドは、出生前介入と両立可能なタイムラインで樹立されるため、臨床的に重要な発生段階で胎児に個別化した治療ツールや再生医療戦略の研究ができる可能性がある。

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