非小細胞肺がん:進行非小細胞肺がんに対する、バイオマーカー情報に基づく標的療法とデュルバルマブの併用 ─ 第2相アンブレラ試験
Nature Medicine 30, 3 doi: 10.1038/s41591-024-02808-y
治療標的になり得る分子変化が現時点で明らかでない非小細胞肺がん(NSCLC)の患者に対する標準治療は、抗PD-1/PD-L1チェックポイント阻害剤を用いる免疫療法で、単剤療法あるいは、プラチナダブレット療法との併用療法が行われる。しかし、全ての患者が持続的な恩恵を得られるわけではなく、免疫チェックポイント阻害への抵抗性が高頻度で生じる。抵抗性が生じる機序には、DNA損傷に応答し修復する経路の異常、STK11/LKB1における変化や機能的変異、抗原を提示する経路に生じた変化、腫瘍微小環境での免疫抑制性細胞サブセットの存在などがあり得る。こうした抵抗性機序を解明し、克服するための効果的な治療法を開発することは、依然として満たされていない医療ニーズである。本論文では、第2相アンブレラ試験であるHUDSON試験において、抗PD-1/PD-L1を用いる免疫療法とプラチナダブレット療法の併用によって奏効が認められなかった、進行NSCLCを対象にした合理的な併用療法レジメンの評価について報告する。合計268人の患者に対して、デュルバルマブ(抗PD-L1モノクローナル抗体)+セララセルチブ(ATRキナーゼ阻害剤)、デュルバルマブ+オラパリブ(PARP阻害剤)、デュルバルマブ+ダンバチルセン(STAT3アンチセンスオリゴヌクレオチド)、デュルバルマブ+オレクルマブ(抗CD73モノクローナル抗体)のいずれかの併用療法が行われた。最も大きな臨床的恩恵はデュルバルマブ+セララセルチブの併用療法で観察された。デュルバルマブ+セララセルチブの併用療法は、他のレジメンをプールした場合と比べると、客観的奏効率(主要評価項目)は13.9%(11/79人)対2.6%(5/189人)、無増悪生存期間(副次評価項目)の中央値は5.8カ月(80%信頼区間4.6~7.4)対2.7カ月(1.8~2.8)、全生存期間(副次評価項目)の中央値は17.4カ月(14.1~20.3)対9.4カ月(7.5~10.6)だった。デュルバルマブ+セララセルチブの併用療法による臨床的恩恵は、既知の免疫療法抵抗性サブグループにわたって一貫して認められた。ATMに変化がありATR阻害薬に応答しやすいと見なされる患者では、客観的奏効率は26.1%(6/23人)、無増悪生存期間の中央値は8.4カ月、全生存期間の中央値は22.8カ月だった。デュルバルマブ+セララセルチブの併用療法の安全性および忍容性のプロファイルは管理可能だった。バイオマーカー解析により、抗PD-L1およびATR阻害が免疫変化を生じさせることで、抗腫瘍免疫を再活性化することが示唆された。デュルバルマブ+セララセルチブの併用療法は、免疫療法抵抗性のNSCLC患者を対象にさらなる試験が進行中である。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT03334617。