Article

血圧における性差:血圧の性別特異的な遺伝的構造

Nature Medicine 30, 3 doi: 10.1038/s41591-024-02858-2

血圧形質に性差が見られる遺伝的基盤およびゲノム基盤については、いまだ大規模な研究はなされていない。本論文では、英国バイオバンクの情報資源を用いて、血圧形質について、男性のみ、女性のみ、および両性を含むゲノムワイド関連解析を行い、血圧形質に関連する座位として、1346の既に報告された座位と29の新たな座位を特定した。明らかになった血圧関連座位のうち、412は女性に特異的な座位であり(P女性 ≤ 5 × 10−8P男性 > 5 × 10−8)、142は男性に特異的な座位であった(P男性 ≤ 5 × 10−8P女性 > 5 × 10−8)。これらの性別に特異的な座位には、特に、エストロゲン受容体1など、ホルモン関連転写因子が多く含まれていた。遺伝子と性別の相互作用や性的二型性効果を解析することで、拡張期血圧あるいは脈圧と女性特異的な関連を示す4つのゲノム領域が特定され、その中には染色体13q34のCOL4A1/COL4A2座位が含まれていた。注目すべきことに、女性特異的に脈圧に関連する座位には、動脈組織においてヒストンH3 Lys27のアセチル化修飾が豊富に存在していた。また、主に女性に見られる血管疾患である線維筋性異形成と脈圧には女性特異的な関連が示され、この関連については共局在シグナルが、Chr13q34のCOL4A1/COL4A2領域、Chr9p21のCDKN2B-AS1領域、Chr4q32.1のMAP9領域で見られた。血圧形質についての性別特異的および性別に偏りのある多遺伝子関連は、複数の心血管形質と関連していた。上記の知見は、臨床的に意義ある、血圧の性別特異的な多面的効果が心血管疾患に影響する可能性を示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度