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異常気象:異常気象事象が米国での医療利用や死亡率へ及ぼす影響
Nature Medicine 30, 4 doi: 10.1038/s41591-024-02833-x
気候変動により極端な気象事象が増加している。しかし、災害後の医療利用や、荒天や気候災害の健康に及ぼす結果は、米国政府によって追跡されているが、それらに対する体系的な解析は十分には行われていない。我々は、2011年から2016年にかけての被害総額420億ドルの気象災害(暴風雨、洪水、洪水/暴風雨、熱帯低気圧、冬の嵐)に対して、出来高払い方式のメディケア(米国の公的医療保険制度)受益者の間での救急部門(ED)受診率、非待機的入院率、死亡率の変化を、差分の差分法(DID)を用いて定量化し、被災後1週間、1〜2週間、3〜6週間で対応付けした被災郡と対照の郡での比較を行った。全体的には、災害後1週目から2週目にかけて、災害は被災した郡でのED利用率上昇と関連していた(DID 1.22%〔95%CI 0.20〜2.25%、P < 0.020〕)。非待機的入院には変化はなかった。死亡率は1週目に被災した郡で上昇し(DID 1.40%〔95%CI 0.08〜2.74%、P < 0.037〕)、6週間続いた。損失や被害が最も大きな郡では、被災した郡全体と比較して、ED利用率や死亡率の大きな増加があった。このように、被害額10億ドル規模の気象災害は、メディケア受益者の過剰なED受診と死亡率と関連していた。これらの結果を追跡することは、患者やコミュニティーを守る適応策、医療システムのレジリエンスや政策に重要である。