アルツハイマー病:アルツハイマー病に対する臨床での脳脊髄液検査と同等以上の精度を持つ血液検査
Nature Medicine 30, 4 doi: 10.1038/s41591-024-02869-z
アルツハイマー病(AD)の疾患修飾療法の登場に伴い、これらの治療から恩恵を得られると考えられる患者を特定することが重要になっている。本研究では、精密な血液検査が、アミロイドβ(Aβ)斑とタウ病変の検出において、既に実証されている脳脊髄液(CSF)検査と同等の性能を示すかを評価した。スウェーデンのBioFINDER-2コホート(n = 1422)と米国のKnight ADRC(Charles F. and Joanne Knight Alzheimer Disease Research Center)コホート(n = 337)において、質量分析を用いて、血漿の%p-tau217(タウの217番残基の非リン酸化型に対するリン酸化型の比)を解析した。また、対応付けしたCSF試料に対して、臨床で用いられているFDA承認済みの自動化免疫測定法により、Aβ42/40およびp-tau181/Aβ42を解析した。主要評価項目は脳のAβ病変の検出、副次評価項目は脳のタウ病変の検出であり、陽電子放射断層撮影法(PET)画像化法を参照標準として用いた。主要解析では、認知機能障害(軽度認知機能障害と軽度認知症)の見られる参加者(利用可能な疾患修飾療法の対象集団)に焦点を合わせた。Aβ PET状態の分類において、血漿の%p-tau217は、FDA承認済みのCSF検査と臨床的に同等であり、どちらも曲線下面積(AUC)は0.95〜0.97の間だった。タウPET状態の分類については、血漿の%p-tau217は、概してCSF検査よりも優れており、AUCは0.95~0.98だった。認知機能障害のあるサブコホート(BioFINDER-2はn = 720、Knight ADRCはn = 50)では、血漿の%p-tau217の精度、陽性的中率、陰性的中率は、Aβ PET状態の場合に89~90%、タウPET状態の場合に87〜88%だった。この結果はCSF検査と臨床的に同等であり、2つのカットオフ値を用いる手法では、さらに95%まで向上した。AD病理の検出において、血漿の%p-tau217は、臨床で用いられているFDA承認済みのCSF検査と同等以上の臨床性能を持つことが実証された。臨床現場で高性能の血液検査を用いることで、正確なAD診断とAD固有治療へのアクセスが向上するだろう。