Review Article
KRAS標的化:がんにおけるKRASの標的化
Nature Medicine 30, 4 doi: 10.1038/s41591-024-02903-0
RASファミリーのバリアント(そのほとんどはKRASに含まれる)は、ヒトのがんで最もよく見られるホットスポット変異であり、予後不良と関連している。およそ40年間にわたって、KRASが創薬標的にならないと考えられた理由の1つは、KRASの構造に小分子結合部位がないためである。しかし、生物工学や有機化学、関連分野の最近の発展により、KRASの直接標的化を可能にする基盤が整ってきた。最初の成功は、非小細胞肺がんにおけるKRAS p.Gly12Cys(G12C)の対立遺伝子特異的な標的化によってもたらされ、結果として、ソトラシブとアダグラシブという2つの薬剤が規制当局から承認された。またG12C以外のバリアントを標的とする阻害剤が、膵臓がんなどの難治性の高い悪性腫瘍で抗腫瘍活性を持つことが予備的に示されている。本総説では、KRASに焦点を合わせてRASの病理生物学的性質について概説し、対立遺伝子特異的なRAS「ON」/「OFF」阻害剤や、「汎」RAS「ON」/「OFF」阻害剤に重点を置いて、多様な悪性腫瘍に対する治療手法を説明するとともに、RASの標的化戦略として免疫療法的な手法や他の主要な薬剤を併用する手法を総括する。さらに、RAS阻害剤に対するde novoの抵抗性と獲得抵抗性の機構について分かっていることをまとめ、併用療法や新たな技術、薬剤開発パラダイムについて紹介し、臨床的に大きな影響が予想されるKRAS治療薬の今後の方向性について概要を示す。