Brief Communication

ブルーのバナナなんてありえないのに

Nature Medicine 9, 11 doi: 10.1038/nn1794

ヒトの色知覚は、物体の着色状態だけでなく、その物体の本来の色に関する知識にも依存していることを報告した論文が、Nature Neuroscience11月号に掲載される。

 Karl Gegenfurtnerたちは、原型色がよく知られている一般的な果物や野菜の画像を使って、被験者が、提示された画像の純色量を操作する実験を行った。この実験で、被験者は、それぞれの画像の果物が無色の状態になるまで色情報を変えるように指示された。この実験結果をみると、果物の自然の色に関する被験者の先入観が、実際の色知覚に影響を与えたことがわかる。被験者は、例えばバナナの画像を白黒の状態にするために、バナナの色をわずかに青く設定した。このことは、被験者が、バナナが黄色だという知覚を補正していたことを示唆している。同様に、レタスを白黒の状態にするために被験者は色をわずかに赤く設定した。以上の結果は、知覚された色に記憶の寄与があるために、それを逆方向の物理的寄与によって相殺する必要があったことを示している。

 今回の研究知見は、ヒトの物体色の知覚が、実際の感覚データと物体のあるべき色についての脳の期待とが組み合わさった産物であることを示唆している。反射光の波長から導き出された情報が、物体の通常の色に関する記憶と組み合わさって、実際に見える色を作り出しているのである。

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