類縁関係のない二本鎖RNAウイルスに宿を借りるキャプシドを持たない一本鎖RNAウイルス
A capsidless ssRNA virus hosted by an unrelated dsRNA virus
2016年1月11日 Nature Microbiology 1 : 15001 doi: 10.1038/nmicrobiol.2015.1
ウイルスは一般に、そのゲノムを包み込む自分自身のキャプシドをコードしているが、サテライトウイルスは複製酵素をコードしていないので、複製するためにはヘルパーウイルスが必要である。今回、植物病原性糸状菌の白紋羽病菌Rosellinia necatrixで繰り広げられる「ヤドヌシ」ウイルス1(yado-nushi virus 1; YnV1)および「ヤドカリ」ウイルス1(yado-kari virus 1; YkV1)と名付けた2種類のRNAウイルス間の相互作用について報告する。YkV1は、動物に感染するカリシウイルスなどのプラス鎖一本鎖(ss)RNAウイルスと系統発生学的な類縁関係を持つのに対して、YnV1は菌類に感染するトティウイルスに類似した非分節型の二本鎖(ds)RNAゲノムを持つ。YkV1は、おそらく機能を持ったRNA依存RNAポリメラーゼ(RNA-dependent RNA polymerase; RdRp)をコードしている。しかし、ウイルス粒子を用いたトランスフェクションおよび感染性の完全長cDNAを用いた形質転換の結果は、YkV1の生存にはYnV1が必要なことを示した。免疫学的および分子生物学的解析の結果、YkV1のRNAだけでなくRdRpも、もう一方のウイルス(YnV1)のキャプシドタンパク質(capsid protein; CP)によってトランスに粒子化されること、また、YkV1によってYnV1の蓄積が増すことが明らかになった。本研究が示す2つのウイルス間の相互作用(共生関係)では、キャプシドを持たないYkV1というプラス鎖ssRNAウイルスが、YnV1というdsRNAウイルスのCPを奪い取って、YkV1があたかもdsRNAウイルスであるかのように複製するのである。