微生物によって切断された免疫グロブリンは自然免疫受容体LILRA2によって感知される
Microbially cleaved immunoglobulins are sensed by the innate immune receptor LILRA2
2016年4月25日 Nature Microbiology 1 : 16054 doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.54
微生物のプロテアーゼ群は、宿主のさまざまなタンパク質を分解する。しかし、微生物がこうしたプロテアーゼ群を獲得するよう進化してきた理由や、微生物が分解した産物に宿主が応答する仕組みについてはほとんど分かっていない。今回我々は、病原微生物のプロテアーゼによって破壊された免疫グロブリンが、ヒト骨髄系細胞の表面に発現するLILRA2(leukocyte immunoglobulin-like receptor A2)というオーファン活性化受容体によって特異的に検出されることを見いだした。マイコプラズマ属細菌(Mycoplasma hyorhinis)、レジオネラ属細菌(Legionella pneumophila)、肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)およびカンジダ属真菌(Candida albicans)由来のプロテアーゼは、免疫グロブリンのN末端領域を切断した。L. pneumophila由来の免疫グロブリン切断プロテアーゼを解析したところ、ビブリオ属(Vibrio)の細菌種や緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含む数種の細菌で保存されているプロテアーゼが免疫グロブリンを切断することが明らかとなった。これらの微生物によって切断された免疫グロブリンは、LILRA2を介してヒト好中球を活性化したが、正常な免疫グロブリンは好中球を活性化しなかった。さらに、切断された免疫グロブリンで初代培養単球上のLILRA2を刺激するとL. pneumophilaの増殖が阻害された。マウスにL. pneumophilaを感染させると、免疫グロブリンが切断されてLILRA2によって認識された。さらに重要なのは、細菌感染症患者の膿汁に切断された免疫グロブリンが存在し、これらがLILRA2発現細胞を活性化したことである。我々の研究結果から、LILRA2が、病原微生物によって引き起こされた免疫グロブリンの異常を検出する宿主免疫系の自然免疫受容体の1種であることが明らかになった。