口腔内に複数の微生物が感染していると代謝のクロストークによりPorphyromonas gingivalisの定着および病原性が調節される
Metabolic crosstalk regulates Porphyromonas gingivalis colonization and virulence during oral polymicrobial infection
2017年9月18日 Nature Microbiology 2 : 1493 doi: 10.1038/s41564-017-0021-6
ヒトのいろいろな感染症は、複数の微生物が原因で引き起こされ、群集を構成する微生物どうしのさまざまな相互作用によって、定着パターンおよび病原性を持つ可能性が形作られる。歯周病は、世界で6番目に多く見られる感染症であるが、この病気は複数の微生物からなる群集のディスバイオーシス(構成バランス異常)の作用の結果として起こる。主因となる病原菌Porphyromonas gingivalisと、その定着を促進するaccessory pathogenである連鎖球菌の1種Streptococcus gordoniiとの相互作用によって、in vitroにおいては群集が形成され、in vivoにおいては適応度の上昇が見られる。しかし、この複数の微生物の相乗作用の基礎となる機構については、まだ十分に解明されていない。今回我々は、2菌種からなる群集において、P. gingivalisが最大限に蓄積するには、連鎖球菌が産生する4-アミノ安息香酸(別名、パラ-アミノ安息香酸。pABA)が必要なことを示す。メタボロミクスおよびプロテオミクスのデータは、外因性pABAが葉酸の生合成に利用されて、ストレスの低減および線毛アドヘシンの発現上昇をもたらすことを示した。さらに、pABAは、マウス口腔感染モデルにおいて、P. gingivalisの定着および生存率を上昇させた。しかしながら、pABAは、P. gingivalisのin vivoにおける病原性の低下および、細胞外多糖産生の抑制も引き起こした。以上の結果をまとめると、これらのデータは、P. gingivalisとS. gordoniiのさまざまな相互作用には多次元的側面があることを明らかにするとともに、口腔内に同居する菌種が産生するpABAが、P. gingivalisの適応度を上昇させると同時に、その病原性を低下させる、きわめて重要な合図になることを証明している。