Review Article
自閉症スペクトラム障害のための創薬:課題および機会
Nature Reviews Drug Discovery 12, 10 doi: 10.1038/nrd4102
自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder;ASD)の罹患率が上昇しているが、その中核症状を治療する効果的な薬物がないことから、この神経発達疾患群の治療法の特定することが緊急の課題となってきている。しかし、その病態生理学についての知識は限られており、in vitroおよびin vivoでの病気のモデル化が難しく、症状も不均一で、さらには過去に臨床開発の経験も不足していることから、ASDの治療薬の開発は困難な状態が続いている。この数年間で、脆弱X症候群や結節性硬化症のような単一遺伝子の変化によって引き起こされるASDに関する知識が蓄積され、こうした困難は軽減されてきている。こうした症例では、疾患の病態生理学的機構の基礎を理解する手がかりが得られている。こうした知識は、臨床開発段階において疾患を変化させる可能性を持つ動物モデルや化合物の開発に役立っている。その上、遺伝学的研究により、ASDの分子病態生理学が明らかになってきており、また、人工多能性幹(iPS)細胞のような新しいツールによる薬物スクリーニングや疾患診断学などの新しい可能性も提供されている。なお、ASD治療薬の開発を妨げるいくつかの主要な障壁に対処するため、大規模な産学共同研究も始まっている。我々は、標的の網羅的同定、薬剤プロファイリングそして新規な領域の臨床試験に関する考察を含めたASDの創薬のための概念的枠組みを提案する。