Review Article
小分子によるニューロトロフィン受容体の調節:神経性疾患の治療に向けた戦略
Nature Reviews Drug Discovery 12, 7 doi: 10.1038/nrd4024
種々のニューロトロフィンならびにそれらの受容体は、さまざまなシグナル伝達経路を調節してニューロンの生存を制御し、軸索および樹状突起のネットワークとシナプス可塑性を維持している。ニューロトロフィンは神経性疾患の治療に応用できる可能性がある。しかしながらニューロトロフィンは、血漿中での安定性が乏しく、神経系への透過は制限されており、そして重要なことに、ニューロトロフィンがさまざまな受容体に同時に結合することによって生み出される多面的な作用のため、治療への応用は限られている。こうした限界を克服するための戦略の1つは、個々のニューロトロフィン受容体を標的とすることである。すなわち、トロポミオシン受容体キナーゼA(TRKA)、TRKB、TRKC、p75ニューロトロフィン受容体あるいはソルチリン(sortilin)といった受容体を小分子リガンドの標的とする方法だ。そのような小分子は、体内で生じるニューロトロフィンによって誘発されるプログラムとは異なった仕組みでニューロトロフィン・シグナル伝達経路のさまざまな局面を調節する可能性もある。通常のニューロトロフィンが関わるシグナル伝達とは見方を変えることで、これらのリガンドにより、広範囲の神経性適応症に対して新しい治療上の選択肢が提供されるかもしれない。