Review Article
RAS–ERKシグナル伝達をがん治療の標的とする:将来性および課題
Nature Reviews Drug Discovery 13, 12 doi: 10.1038/nrd4281
RAS–RAF–MEK–ERKシグナル伝達経路は、腫瘍において高い割合で過剰に活性化している。この過剰な活性化の原因として最も頻度の高いものは、KRAS、NRASおよびBRAF遺伝子の活性化変異である。近年、RAF阻害剤やMEK阻害剤などのERKシグナル伝達の構成成分を標的とする化合物の使用によって、転移性黒色腫の臨床成績が大幅に改善されており、またこうした化合物は、他の異なる複数類の腫瘍でも有望な臨床活性が示されている。しかし、こうした阻害剤の奏効率には大きなばらつきがあり、その有効性は主に耐性の発現によって制限されている。RAF阻害剤とMEK阻害剤に対する自然耐性と獲得耐性はいずれも、阻害剤存在下でのERKシグナル伝達の持続と関連していることが多いことから、この経路を標的とした、より刷新的なアプローチが必要と思われる。