Review Article

多能性幹細胞の現状:初めての幹細胞治療の臨床実施への動き

Nature Reviews Drug Discovery 14, 10 doi: 10.1038/nrd4738

多能性幹細胞(PSC)は、体内のどのようなタイプの細胞にも分化し得るため、創薬と再生医療に向けて大きな期待が寄せられている。30年以上も研究が続けられ、その間には多能性幹細胞が腫瘍化する可能性と分化法の非効率性による研究の遅れがあったが、今、この研究分野に転機が訪れている。ヒトにおける多能性幹細胞由来製品の有効性を検証するための臨床試験が世界中で少なからず実施されているのだ。この人類初の臨床試験の大半は、眼疾患が関連のもので、第I相、第II相試験で有効性の可能性が明らかになっているだけでなく、有望な安全性データも示されている。また、誘導多能性幹細胞(iPSC)技術の登場によって、遺伝的素因のある患者由来の細胞を用いた疾患モデルが幅広く開発されるようになり、創薬が促進されている。本総説では、再生医療と新薬開発における多能性幹細胞の使用をめぐる最近の進展と未解決の課題について論じる。

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