Review Article
がんにおけるガス状伝達物質:病態生理学から実験的治療まで
Nature Reviews Drug Discovery 15, 3 doi: 10.1038/nrd.2015.1
一酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)および硫化水素(H2S)という3種類の内因性ガス状伝達物質は、数多くの重要な生物学的機能を調節している。新たに得られたデータから、腫瘍生物学に関するいくつかの新しい機構が、これら3種類のガス状伝達物質のそれぞれについて明らかになっている。こうしたガス状伝達物質は、その生合成を阻害した場合だけでなく、生体内濃度の一定の閾値を越えて上昇した場合にも抗がん効果を示すことがあり、がんで二相性の薬理学的特性を示すことが今では分かっている。本総説では、それぞれのガス状伝達物質ががんにおいて果たす役割と、おのおののガス状伝達物質の生体内濃度を調整する薬理作用を持つ化合物(一部は初期臨床研究段階にある)の効果について述べる。これら3種類のガスの薬理学的特性およびこれらの生物学的作用の根底にある機構をさらに明確に理解することが、今後の臨床医療への応用に結び付くと期待される。