Review Article

腫瘍関連間葉系幹・ストローマ細胞:新たな治療標的

Nature Reviews Drug Discovery 16, 1 doi: 10.1038/nrd.2016.193

間葉系ストローマ細胞(MSC)としても知られている間葉系幹細胞は、さまざまな組織に存在しており、組織の損傷部位へ能動的に移動して創傷治癒に関与することが知られている。腫瘍は「絶対に治ることのない傷」と見なされ得るため、MSCは、腫瘍からの合図に応答して腫瘍の微小環境に絶え間なく引き寄せられ、その構成成分となることがある。近年、こうした腫瘍関連MSC(TA-MSC)が腫瘍のイニシエーション、プロモーション、プログレッションおよび転移に積極的な役割を果たしていることが明らかになっている。本総説では、TA-MSCが腫瘍細胞の存続、増殖、移動および薬剤耐性の調節において果たす病因的な役割についての最近の知見や、MSCが腫瘍の微小環境の免疫状態に及ぼす影響について論じる。また、TA-MSCの上流あるいは下流の調節因子を標的とした治療戦略や、MSCを、殺腫瘍化合物を送達する媒体として用いる戦略についても論じる。TA-MSCの機能に関する新たな知見は、腫瘍に対する新規な治療戦略の開発につながると期待される。

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