Review Article
次世代の抗体–薬物複合体の開発戦略および課題
Nature Reviews Drug Discovery 16, 5 doi: 10.1038/nrd.2016.268
抗体–薬物複合体(ADC)は、がん治療法の中で最も急速に進展しているクラスの1つである。半世紀にわたる研究を経て、2011年にはブレンツキシマブ・ベドチン、続いて2013年にはトラスツズマブ・エムタンシンが承認されたことにより、60を超えるADC候補を評価している現在進行中の臨床試験の道が開かれた。(2000年代初頭に開発された)第一世代のADCはある程度の成功しか得られず、このことが、第二世代のADCを市場に投入するための戦略をもたらした。第二世代のADCは第一世代に比べ、抗体に結合する細胞傷害性薬物の比率が高く、薬物と結合していない抗体の比率が低く、薬物と抗体をつなぐリンカーの安定性が高い。さらに、過去10年間に得られた教訓は現在、第三世代のADCの開発に用いられている。本総説では、最良の標的抗原や適切な細胞傷害性薬物を選択するためのさまざまな戦略、最適化した各種リンカーの設計、生体直交型結合化学の開発、そして、毒性という問題について論じる。部位特異的に薬物を結合させるための抗体の選択および改変は、ADCの均一性を高め、安定性を向上させる他、新しい結合化学ならびに作用機序の探求にもつながるので、ADCの研究における優先事項である。