Review Article
Gタンパク質の阻害によるGタンパク質共役型受容体シグナル伝達への薬剤標的化
Nature Reviews Drug Discovery 17, 11 doi: 10.1038/nrd.2018.135
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、最大の薬剤標的クラスであり、その主な理由は、ドラッガビリティー、多様性、生理学的有効性にある。多くの薬剤は、GPCRの特定のサブタイプを選択的に標的とするが、複数の受容体が関係する可能性のある複雑な多因子疾患状態において、個別のGPCRに対して高い特異性を持つ薬剤が必ずしも望ましいとは言えない。1つの方法として、GPCRを直接の標的とするのではなく、Gタンパク質サブユニットを標的とするというものがある。この方法は、複数のGPCRに共通の経路を遮断して、広域な有効性を実現できる可能性を秘めている。さらに、多くのGPCRは複数のGタンパク質シグナル伝達経路と共役しているため、特定のGタンパク質サブユニットを阻害することによって、GPCRシグナルの一部だけが阻害され、GPCRシグナルに「偏り」が生じる場合がある。Gタンパク質のαサブユニットまたはβγサブユニットを標的とする分子が開発されており、前臨床研究の複数の疾患モデルにおいて、強力な有効性とGタンパク質シグナル伝達の「偏りのある」阻害を示している。本総説では、Gタンパク質のαサブユニットとβγサブユニットのリガンドの開発と特徴解析について論じた上で、この興味深い新たな手法が、疼痛、血栓症、喘息、心不全などの適応症に対して治療効果を示す可能性を秘めているという前臨床研究のエビデンスを提示する。