異所的に発現する嗅覚受容体と味覚受容体の治療への利用可能性

嗅覚受容体と味覚受容体は、それぞれ鼻の嗅覚上皮と味蕾の味覚細胞で主に発現しており、そこから感覚信号がリアルタイムで脳に伝えられる。ところが嗅覚受容体と味覚受容体は、それぞれ鼻腔組織と口腔組織以外の複数の組織でも発現しており、精子走化性、筋再生、気管支収縮と気管支拡張、炎症、食欲調節、エネルギー代謝など多様な生物学的過程に関係している。こうした異所発現する受容体の生理的役割の解明によって、創傷、脱毛症、喘息、肥満症、がんなどの疾患の治療と診断への応用が有望であることが明らかになっている。本総説では、異所発現する嗅覚受容体と味覚受容体の多様な機能に関する現在の理解を概説し、治療への利用可能性を評価する。