Review Article
鎌状赤血球症の治療戦略:多剤併用アプローチに向けて
Nature Reviews Drug Discovery 18, 2 doi: 10.1038/s41573-018-0003-2
臨床医と科学者は、血管閉塞症、貧血症、溶血、臓器損傷、疼痛などの鎌状赤血球症(SCD)の全身症状につながるヘモグロビンSを作り出すβ-グロビン遺伝子のA→T置換の影響を100年以上にわたって解明してきた。ヘモグロビンSの重合に関しては、機構と赤血球に対する影響の解明が進んできているが、米国食品医薬品局の承認を受けたSCD治療薬はヒドロキシ尿素とL-グルタミンの2種類しかない。また、これらの治療選択肢は、相互に依存する病態生理プロセスの複雑なネットワークから生じるSCDの症状に十分に対応できていない。本総説では、こうしたプロセスを標的とする新薬、例えば、胎児ヘモグロビンを再活性化する薬剤、抗鎌状化薬、抗接着剤、虚血再灌流と酸化ストレスの調節因子、遊離ヘモグロビンと遊離ヘムに対抗する薬剤、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤などを開発する取り組みを総説する。さらには、治療法として有望視されているが、現在は、技術的問題と治療費用のために幅広い応用が制限されている遺伝子治療についても論じる。従って我々は、SCD患者の生活の質と生存率を高めるためにはSCDの病態生理学に基づいたシステム重視の多剤併用戦略の開発が必要であると提案する。