Review Article
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ阻害の過去、現在、未来
Nature Reviews Drug Discovery 19, 10 doi: 10.1038/s41573-020-0076-6
ポリ(ADP-リボシル)化過程とこの反応を触媒する主要酵素であるポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ1(PARP1)が発見されたのは、50年以上前のことである。それ以来、DNA修復、遺伝子転写、細胞死などの細胞過程におけるPARP1の役割の解明が進み、さまざまな疾患、特にDNA修復経路の異常により腫瘍細胞の感受性がPARP活性の阻害に対して高くなるがんにおけるPARPの治療的阻害を研究できるようになった。強力なPARP阻害剤を特定して評価する研究も行われており、これまでのところ、いくつかのタイプのがんの治療に用いる4種類のPARP阻害剤が規制当局によって承認されている。また、PARP阻害剤には、非腫瘍性疾患の治療可能性があることも明らかになっている。本総説では、PARPに関する生物学と薬物化学の研究成果を時系列に整理し、PARPが役割を果たしている病態生理学的過程を概説し、がん治療時のPARP阻害剤耐性の相殺、PARP阻害剤の非腫瘍性疾患治療へのリパーパシングなど、この分野における重要な機会と課題に光を当てる。