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mRNAプロセシングを標的にする抗がん戦略
Nature Reviews Drug Discovery 19, 2 doi: 10.1038/s41573-019-0042-3
mRNAをがん治療の標的に利用できる可能性が、過去10年間の発見によって注目を集めるようになった。具体的には、がんのイニシエーションとプログレッションに、遺伝子変異の他にもmRNAの変化が寄与していることが、RNA配列決定によって明らかになったのである。実際、腫瘍においてmRNA前駆体プロセシング(スプライシングによるイントロン除去、切断とポリアデニル化による3′末端の形成を含む)が頻繁に変化している。こうした変化の結果、数々のがん特異的mRNAが生じ、正常なタンパク質や新たな機能を持つタンパク質の発現量が変化し、がん遺伝子の活性化やがん抑制遺伝子の不活性化につながっている。また、異常なスプライシングを受けたmRNAとポリアデニル化mRNAも、がん治療に対する抵抗性に関連しており、意外にも、スプライシングの薬理学的阻害に対する感受性の高いがん種が存在することも明らかになった。本総説では、がんにおいてスプライシングとポリアデニル化がどのように変化するのかという点に関して、最近になってどのように解明が進んだのかを要約した上で、この知識が、どのように創薬に橋渡しされて、スプライソソームを調整する小型分子とオリゴヌクレオチドの生産につながり、がん治療のための臨床試験が実施されていることを重点的に論じる。