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糸球体濾過障壁:腎疾患の新規治療薬の標的構造
Nature Reviews Drug Discovery 20, 10 doi: 10.1038/s41573-021-00242-0
腎臓の正常な機能が失われている人は、全人口の10%以上を占めており、腎臓の機能不全は、合併症と死亡の一因となる。現在、腎疾患の治療には、免疫抑制剤、降圧剤と利尿剤が用いられ、その一部が治療に奏効しているが、限定的な奏効にとどまっている。ほとんどの腎疾患は、糸球体濾過障壁(GFB)の破綻を特徴としている。GFBは、特殊化した足細胞によって維持されており、足細胞と他のGFB細胞の細胞間情報伝達に関する構造機能実験と研究の成果が、遺伝学とゲノム学の進歩と相まって、GFBに直接介入する新世代の治療薬の基礎を築いてきた。そうした治療薬には、アポリポタンパク質L1(APOL1)、短型一過性受容体電位チャネル(TRPC)、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFLT1;可溶性血管内皮成長因子受容体1とも呼ばれる)、Roundabout homologue 2(ROBO2)、エンドセリン受容体A型、可溶性ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子表面受容体(suPAR)とコエンザイムQ10(CoQ10)基質中間体のそれぞれの阻害剤が含まれる。これらの分子標的は、GFBの生物学の2つの重要な要素であるミトコンドリア機能とアクチン–ミオシン収縮機構に集約される。本総説では、GFBの完全性の維持に焦点を合わせた治療と開発、そして、この発展しつつある分野で新たに表面化している論点について考察する。