Review Article
キナーゼ創薬の動向:標的、適応症および阻害剤の設計
Nature Reviews Drug Discovery 20, 11 doi: 10.1038/s41573-021-00252-y
2001年にイマチニブがFDAによって承認されたことは分子標的がん治療における画期的な進歩であり、キナーゼ阻害剤が腫瘍学をはじめとする分野で重要なクラスの医薬品としての登場する前触れとなった。それから20年が経過した今、本総説では、キナーゼを標的とする承認済みの治療薬および治験段階の治療薬の全体像、そしてキナーゼ阻害剤の最も多い標的やキナーゼ阻害剤の適応範囲の拡大といった、全体像の中の傾向を分析する。現在、FDAによって承認済みの小分子キナーゼ阻害剤(SMKI)は71種類、他の規制当局によって承認済みのSMKIは16種類ある。これらの主要な適応領域は腫瘍学であるが、関節リウマチなどの重要な適応症が承認されている他、臨床開発中のSMKIの3分の1は、腫瘍学以外の疾患を対象としている。SMKIの臨床試験の情報によると、現在約110種類の新規キナーゼが標的として探究されているが、承認済みのキナーゼ阻害剤の約45個の標的と合わせても、ヒトのキノームの約30%にすぎず、これは、この薬剤クラスには、まだかなりの未開拓の機会があることを示している。我々はまた、アロステリック阻害剤や共有結合性阻害剤、二機能性阻害剤、化学分解剤の開発など、キナーゼ阻害剤の設計の傾向についても考察する。