Review Article
合成生物学を利用して「生きている」治療薬を作製する
Nature Reviews Drug Discovery 20, 12 doi: 10.1038/s41573-021-00285-3
合成生物学分野の着実な進歩により、科学者は、新しい治療薬の開発の基盤として、小分子薬や生物製剤の代わりに、遺伝子改変細胞を使用できるようになった。合成遺伝子回路を付与された細胞は、特定の疾患バイオマーカーに応答して、治療活性の局在、時期と用量を制御することができ、従って、疾患との闘いにおける強力な新しい武器となる。本論文で我々は、合成生物学的アプローチを適用して、生きている細胞に治療機能をプログラムする方法を概念化し、こうして開発された治療薬が、従来の治療薬に対して、柔軟性、特異性と予測可能性の点で優れていることを論じ、この新規治療薬の開発に関する課題も論じる。そして、細胞内または細胞外バイオマーカーに由来するシグナルの生物学的センシングと計算が可能な合成遺伝子回路を組み込まれた遺伝子改変細胞の作製に関する顕著な進歩を示す。また、我々は、(ヒトまたは微生物の)細胞足場と改変細胞がそのヒト宿主内で治療機能を発揮する部位に基づいて、開発された治療薬を分類し、記述する。合成生物学を用いた細胞ベースの治療薬の設計は、医学において急速に成長している戦略であり、広範なヒト疾患に対して有効な治療薬の開発が大いに期待されている。