Review Article
タンパク質アルギニンメチル化:その謎めいた機能から標的療法まで
Nature Reviews Drug Discovery 20, 7 doi: 10.1038/s41573-021-00159-8
タンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ(PRMT)類は、魅力的な治療標的として登場してきた。PRMTは、転写、スプライシング、RNAの生物学的機能、DNA損傷応答と細胞代謝を調節する。これらの基本的過程は、多くの疾患において変化している。各種PRMT酵素が、とりわけ特定の代謝状況において、あるいは特定の変異の存在下で、がん細胞を助長し、維持する過程を機構的に理解することで、腫瘍学においてPMRTを標的とする理論的根拠が得られた。現在進行中の阻害剤の開発は、構造生物学によって促進されてており、PRMTの大部分に対するツール化合物を生み出し、最先端の腫瘍の治療標的であるPRMT1とPRMT5のための臨床プログラムを可能にした。遺伝学的ツールと化学的ツールを用いた詳細な機構的研究によって、免疫細胞やがん細胞の調節、心血管機能、神経機能の調節におけるPRMTの役割が詳細に明らかになっており、PRMTが関与する経路の中で、がん併用療法において相乗的な標的とされ得るものの判定も続けられている。本論文は、アルギニンメチル化の複雑な機能に関する我々の知識を高めて、将来の臨床開発の指針となるものであり、新しい臨床適応を特定できる可能性がある。