Review Article

精密腫瘍学の時代におけるがん代謝の標的化

Nature Reviews Drug Discovery 21, 2 doi: 10.1038/s41573-021-00339-6

ワールブルグ(Warburg)によるがん代謝の変化の発見から100年が過ぎ、シドニー・ファーバー(Sidney Farber)が葉酸拮抗薬を紹介して小児白血病の治療を一変させてから70年以上がたち、代謝ががん遺伝子と関連付けられてから20年が経過した。しかしこの10年間で、がん代謝を治療の標的とする研究はあまり進んでいない。がん代謝に基づいた治療薬は、開発成功例が少なく、その一部は臨床試験中あるいは臨床試験に向けた準備が進められている。がん細胞の内因性代謝を標的とする戦略は、腫瘍の進行と維持に極めて重要な役割を担う非がん間質細胞と免疫細胞の代謝を考慮していないことが多かった。免疫細胞の代謝と先天性代謝異常の臨床症状を考慮すれば、代謝作用薬の開発過程において、腫瘍外への望ましくない効果や、オンターゲットへの望ましくない効果を切り離せる可能性がある。そのため、薬物設計のための考え方の枠組みにおいて、腫瘍免疫微小環境における非がん細胞とがん細胞の代謝脆弱性を考慮しなければならない。本総説では、がん代謝をがん治療の標的とする研究における最近の進展、注目すべきマイルストーンと失敗を記述し、この分野において前進する方法を論じる。

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