Review Article
神経疾患に対するAAV媒介in vivo遺伝子治療
Nature Reviews Drug Discovery 22, 10 doi: 10.1038/s41573-023-00766-7
最近の遺伝子補充療法の進歩によって、神経疾患の治療法の選択肢が広がっている。利用可能な送達媒体の中では、アデノ随伴ウイルス(AAV)がベクターとして選ばれることが多い。しかし、結果が安定しておらず、疾患の経過が劇的に変化した試験があった反面、ごくわずかな効果しか認められなかった試験もあり、予期せぬ毒性が示された試験さえあった。従来の低分子医薬品開発の場合と異なり、AAV遺伝子治療の治療プロファイルは、AAVキャプシドと治療用導入遺伝子の両方に依存している。この分野は急速に発展しており、神経疾患に対する多数の遺伝子補充療法の臨床試験が進行中である。前臨床試験の結果を臨床に結びつける際に影響を受ける要因として、投与経路、治療のタイミング、免疫応答、利用可能なモデル系の限界などがあり、これらの要因に関する知識の量が増えてきている。また、この分野では、悪影響を軽減するためのソリューションの候補が開発されてきており、例えば、AAVキャプシドの工学的作出や導入遺伝子の発現を制御するためのAAVの設計がある。一方、神経疾患に対する遺伝子補充療法の新たなフロンティアに取り組む前臨床研究も行われており、ミトコンドリア病と神経発達症に重点が置かれている。本総説では、神経疾患に対するAAV媒介遺伝子補充療法の現状を記述し、この治療法の安全性と有効性を最適化するために極めて重要な諸要素とこの分野において満たされていないニーズにも触れる。