Review Article
抗マラリア薬の創薬:進展とアプローチ
Nature Reviews Drug Discovery 22, 10 doi: 10.1038/s41573-023-00772-9
最近の抗マラリア薬の創薬では、安全性を考慮し、服薬の利便性を向上させながら、新たに出現している薬剤抵抗性を克服する新薬を作り出すための競争が繰り広げられている。創薬のための努力の結果、さまざまな新しい分子が生み出され、その多くは新規の作用機序を持っていて、最も開発が進んでいるものは後期臨床開発段階にある。こうした創薬によって、抗マラリア薬がどのように作用するかについての理解が深まり、新世代の創薬標的が特定されて、構造に基づいた複数の化学的取り組みにつながっている。資金が限られているため、新薬候補に優先順位をつけることは極めて重要である。新薬候補は、効力が高く、薬剤抵抗性が生じにくく、服薬回数が少ないことが好ましい薬物動態プロファイルを持ち、低コストで、女性や乳幼児における安全性と忍容性が前臨床試験で実証されていることなどが必要であり、できれば、マラリアを媒介するAnopheles(ハマダラカ属)の蚊へのPlasmodium(マラリア原虫)の伝播を阻止する能力があるほうが良い。本総説では、これまでに成功したアプローチ、前臨床開発と臨床開発における進展、そして、現在の課題について概説する。さらに我々は、貧困に関連する病気における創薬のモデルとして、抗マラリア薬の創薬がどのように役立つかを説明する。